地下鉄で咲いたチューリップ

その日は外出先で突然の雨に降られて、買ったばかりの、そしてとってもお気に入りの折りたたみ傘を初めて使った日だった。

会社に戻る地下鉄の中で、隣に座っていた老婦人から「とってもきれいな傘ね」と不意に話し掛けられた。「ありがとうございます」と答えると、その傘から思い出されたらしい、彼女の女学生時代の話を優しい声で話し始めた。

音楽学校に通っていた女学生だったこと。その頃、時代は戦争の真っ只中で、きれいな色のお洋服を着たくてもそれは適わず、憧憬をもって過ごしたこと。そしてそんな話の間にも、何度も何度もクリーム色の地にたくさんのチューリップが咲いた私の傘のことを誉めてくれた。

地下鉄2駅分という、本当に数分の間。なんだかとっても幸せだった。そして随分経った今でも、その傘を見るとその時のことを思い出し、幸せな気分になれる。

言葉の魔法は、とっても長持ちなのだ。
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by sweetflowers | 2007-03-08 17:28 | 日々のあれこれ | Trackback | Comments(0)
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